4月1日ギリギリにUPしたものです。
注意:ヴィジランスが哀れです。

 

 

 

正しく死ぬために、私は死神を殺してみせる

 

 

 

「覇王メディアンの息子であり、次代の王となるべき運命を背負わされた王子よ」

「なんだい、ヴィジランス……改まって」

「君は、後数時間後に、死ぬ」

 突然心痛な面持ちで告げられた言葉に、さすがの王子も言葉を失った。

「数時間、か。そうか……そう、なのか。しかし赤斑はまださほど広がっていないように思ったんだがな」

「死因は赤禍ではないんだ」

「は?」

 王子はこてん、と首を傾げる。

「私が今、この場で……君を殺す」

 穏やかな笑顔で告げられた言葉。

「ヴィー……お前、は」

「私は、君に近づきすぎたんだ」

「理解できない」

「しなくてもいいよ。私はただ……君を殺す。それだけが、私が今なそうとしていることだ」

「そうだな……お前は、死神だった」

 少年のどこか達観した笑みに釣られて、ヴィジランスも微笑んだ。

「大丈夫、痛みはない。そして私は君の魂を迷わぬよう天に送り届ける。それが私の使命だから」

「……そう、か」

「一緒に、逝こブゲドリャヴァッ

 柔和な笑みを固めたまま血を吐いて倒れた死神の上に、気が付いたら堂々と鎮座している少女。

 踵の先を惜しげもなくヴィジランスの顔にめり込ませ、彼の口元から更に血の海を広げていく。

 手に持った漆黒の剣はとりあえず急所をぐりぐりとえぐっていた。

「キモいんだ私を誑かすんじゃないこの腐れ死神め」

 絶対零度の温度で一言だけボソッと言い放つと、少女は血の海の中に唯一ある肉塊の島に座り込んだ(その時更にカエルが潰れたような音が聞こえたが少女は気にも留めない)。

 赤い髪を持った少女は、天幕のベッドの上で呆然としている王子の方を向いて、諭すように言った。

「あなたが死ぬのはまだ先だし、何よりもこんな害虫に殺されちゃ駄目」

「……はあ」

「どうせこいつの目的はあなたを天界に拉致ることに過ぎないんだから」

「は?」

 少女の言っていることがいまいち理解できずに首を傾げながらもその下のヴィジランスの方に目をやってみる。

 倒れているヴィジランスは鼻血を噴いていた(否激突ダメージ)。 

「……あぁぁぁぁぁ……王子の魂が……オンナノコの王子……」

「……ヴィー?」

「この変態はあなたを天界に拉致った挙句、そのまま天界でいつまでも永遠の時をあなたと二人で過ごしたいがために、あなたを殺そうとしたんだ」

「は?」

「違う!」

 ヴィジランスは苦痛に顔を歪ませながら、少女の目を見て叫んだ。

「私は……そんな理由で、王子を殺そうとしたのではない……」

「じゃあ何?」

 吐き捨てるように少女が問うたその言葉に、ヴィジランスは悲しげに目を伏せた。

 しばしの沈黙、しかしその唇はゆっくりと、それでもしっかりと言葉を紡いだ。

現世では王子は男だから、転生してもらって女になってくれれば私も手を出せるかなと

心置きなく逝ってこい

 少女は急所に刺していた漆黒の剣を抜いて、ヴィジランスの首元にあてた。

「や、や、や、やめるんだ!リベア!あなたは、自分が何をしているのか分かっているのか!?」

「分かっている。充分にわかっているとも!」

 リベアと呼ばれた少女は笑顔のまま。

「余は死神を殺そうとしているのだ」

「いや、それはもっと未来の台詞では!?」

「大丈夫、ヴィジランス。あなたは今死ぬ。間違ってない」

 少女の漆黒の剣を持つ手にぐっと力が込められる。

「大体リベア!」

「何故その名前を知っているかはともかく、何かなヴィジランスくん?」

「何故こんなところにいるのかを聞いてもいいかな?」

「え、危機に陥っている私を助けるために決まってるじゃない」

「しかし私がこのまま天界に王子と共に引っ込めば、あんな面倒なことにはならないと思うが?」

「そんなことしたらストーリーが一から無駄になるじゃないか。それにあんたと二人だなんて絶対に嫌だから

「実は後者しか頭にないんじゃないかな……リベア……」

 血の涙が更に赤い海を広げていく。無駄にだだっ広い王子の部屋の床には既に岸はなく、閉じられた扉の下から血がにじみ出ていく情景はそれはそれはホラーだったとか。

「そ、それにリベア」

「何かなヴィジランスくん」

「タイムパラドックスという言葉を知っているかい……?」

「知らなかったら適当に調べて置いてください。で?」

「今ここに私とギグ、そしてリベアと王子……同じ魂が二組も存在する。私たちは時間の歪の中に飲まれて消えてしまいかねない」

「で?」

「今君たちが元の時代に帰ってくれるのならば間に合う……かも」

「既にあんたがこの子を殺そうとした時点でタイムパラドックスが起こってるんじゃないの?」

「じゃ、じゃあリベア!ほ、ほら。今日はエイプリルフールなんだ」

「それで?」

「冗談だった、って、ことでひとつ」

「エイプリルフールなら昨日だけど?」

「あ」

「ま、同じ魂がどうのってことについては心配ないよ……大丈夫」

 すがすがしいほどの笑顔で、少女は告げた。

「私、ギグ喰ったし

「裏ルートですかああああああああああ!!!!????」

「もう既に世界の崩壊は約束されているんだ。だ、か、ら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心置きなく、逝きなさい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 殺 神 遊 戯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんというか、キモいヴィジランスが書きたかったんですごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
4/1もPM9時に差し迫った辺りからいきなり何となくエイプリルフールネタがいきなり書きたくなったんですごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

20070401 
20070402 微妙に修正