ファンタジックワールド
「リオン、ちょっと先に行ってて。ロイと話があるから」
「……分かりました。外にいますから、何かありましたら声を掛けてください」
「ありがとう」
「久しぶり、だな。王子様?」
「ああ、久しぶり。まさかこんな形で会うことになるとは思わなかったけど」
「お前の邪魔して悪かった。でも、こうでもしなきゃ会うことも出来ないと思ってさ」
「まあ、そうだね……。でも、僕も貴方に会わなきゃって思ってたから。だって貴方の『本当の家族』が……」
「ま、血の繋がりはそうなんだがよ……それよりさ、『王子様』」
「……『王子』は貴方でしょう?今ならまだ戻れるんじゃないかな。叔母上やリオンたちに全部話して……」
「バーカ。あいつらにとっての『王子』はお前だよ」
「でもやっぱり本当は貴方のほうが……」
「違うね。リムスレーアの慕う兄貴は確かにお前だし、さっきのリオンって娘が守ろうとしているのも紛れもなく……
お前だよ。それは変えることは出来ないさ」
「……でも、あの人たちと僕に血の繋がりはない。本当に血を分けた家族は貴方だ」
「違うね。俺は王子としての重さや血の通った家族よりも、自分の自由を選んだ酷い奴だ。全てをお前に押し付け
て逃げ出した、単なる一小悪党だよ」
「それを言うなら、僕は王子の重みなんて何も知らずに、ただ華やかな世界に行きたかっただけの小者。権力の上
に立つ王子としての立場を捨てる貴方を理解できず、そして自身の欲望のためだけに全てを捨てた強欲者」
あの時彼と出会った瞬間、世界は変わった。
この国の王子として生を受けた少年は、生まれながらの縛りと重みに耐えられなかった。
同じ顔をした少年が友人と共に街を自由に駆け回る姿が、眩しかった。
「どうして同じ姿なのに、僕には自由がないの?」
生まれてすぐ親に捨てられた少年は、自らの境遇と立場、貧困を嘆いていた。
同じ姿をした少年が雲上で身なりのよい服装と快適な生活を送っていることが、恨めしかった。
「どうして同じ姿なのに、僕には与えられないの?」
――だったら、僕と代わってよ。
「……父さんと母さんは、僕のこと気付いてたんだ。なのに、何も知らない振りをしてくれた。本当の息子のように
扱ってくれた」
「……あの人たち、俺のところに来てくれてたんだ。その日暮らしをしている俺を探し出しては、こっそりと、会いに
来てくれた」
「家族を知らなかった。家族って血の繋がってるものだけを言うんじゃないんだ。あそこにいるすべての人が、僕の
家族になってくれた」
「家族を知らなかった。優しく傍にいてくれる人たちが確かに居ることを目に入れようともしてなかった。単なる厄介
者でしかない俺を受け入れてくれたのは、血の繋がり以上に絆で繋がれたスラムの皆だった」
「僕たちは、本当に何も知らなかったんだね」
「俺たちは、知ろうともしてなかったんだな」
「償うには大きすぎる罪だ」
「お前にこれほどになるまでの大きな重荷を押し付けたことも、俺の罪だ」
「重荷だなんて思ったことはない。これは……自分の意志だ」
「そう、か……」
「俺は……俺は『ロイ』として、お前を支えたい。『ロイ』として俺は皆に応えたい。都合よすぎな話だが……受け入
れてくれるか?」
「……わかった。ありがたくその話を受けるよ……いこう、ロイ」
「ああ、王子様」
⇒ロイと王子が幼少時に入れ替わってたら。本当はロイが王子で、王子がロイだった、なパラレル。
本拠地死守ルート(見てないけど)であそこまで威厳のある姿ができるのもそのためです(そんな馬鹿な
2006/10/19