同じ空の下、その夜

 

 

 

 

 

 

 12月のある日にクリスマスというものがあるらしい。

 

 赤い服を着た老人がやってきて、子どもたちにプレゼントをくれる。

 皆で集まってパーティも。

 

 でも、どこの風習なのかは誰も知らない。

 こんな行事を誰が広めたのかも知られていない。

 

「この辺って雪降るよな」

「うん、少しだけど」

「じゃあさ、『クリスマス』って知らないか?」

「くりすます?何それ。栗、リス、枡?」

「待て待て」

「雪と関係あるの?」

「本当は雪の降る地方のお祭りらしいんだ。でも、ここも違うんだな」

「お祭り、なんだ。どんなの?」

「ああ・・・そうだ、やってみようか!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――テッド・坊ちゃん(1)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにありますは見栄えはおいしそうな2種類のクッキー」

「……そこ、邪魔なんだけど」

「こっちの袋に入っているのは、かのトランの英雄による一品」

「……」

「こっちの袋に入っているのは、かの英雄の息子の姉による一品」

「……――――――ナナミのじゃないかっ!」

「これを、こう、ザーっと」

「(混ぜた―――!?)」

「ふっふっふ、何か言いたそうな顔だな。ルック」

「……楽しそうな顔してるね、シーナ」

「それをこう……あ、そこ行く甘党なゲオルグのおっさん!」

「ん、なんだ?」

「(『甘党な』って……突っ込めよ)」

「これ一つどうっすか」

「ほう、クリスマスだからか?では一つ、……」

「……」

「……」

「美味いな。群島のほうにいたときに似た味のものを食べたことがあるが、そっちのものか?」

「へえ……ナナミのは引かなかったんだね……」

「ちぇ、つまんねえの」

「……何の話だ?」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――シーナ・ルック・ゲオルグ(2)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舟を飾り、港に灯火を。

 赤と白のコントラストを引き連れて。

 

 出航しよう。

 

「王子殿下。リノ・エン・クルデスの晴れ姿、お見せすることができ嬉しく思います」

「凄いな。何かのお祭りなのか?」

「ええ。クリスマスというものです。本来は雪の降る地域の祭りだそうですが、リノ王の意向によりオベ

ルで始められたのをきっかけに群島中に広まったんですよ」

「それで舟を飾るのか?」

「はい。今夜は船上パーティを行います。皆さんにも参加していただけると嬉しいですね」

 

 夜の港には灯台の大きな光と、散りばめられた小さなキャンドルの光。

 人々は赤色の衣装に身を包む。

 巨大船はきらびやかな装飾に包まれて。

 

 今、海の上に。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――王子・ベルナデット(5)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メリークリスマス!」

「わっ!どうしたんだい、その格好?」

「サンタさん、だよ。これで白いお髭があれば完璧かな。……キリルくんにもクッキーどうぞ」

「あ、ありがとう」

「スノウもここにいたんだ。はい、クッキー」

「ああ、いつもの。ありがとう。君のクッキー好きなんだ」

「嬉しいな」

「ねえ、『めりーくりすます』ってどういうこと?」

「今日は『クリスマス』なんだって。お祭りなんだそうだよ」

「本で読んだくらいなんだけど、解放軍のときに僕が提案したんだ。お祭りは多いほうが気も晴れるし」

「うん、楽しかったよ。船のあちこちが騒がしくて、美味しい料理をたくさん食べて」

「へえ……本当に楽しそうだね」

「これね、本当は雪が降るところのお祭りらしいんだ……いつか、そこに行ってみたいなあ」

 

―――きっと僕には無理だと思ったから、この望みはクッキーの作り方と共にあの人に託したんだけど。

 

 

―――――――――――――――――――――4主人公・キリル・スノウ(4&Rhapsodia)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⇒1年前に書いてたものを大幅に手直し+書き足し。全ての根底に4があるあたり、好みがうかがえます。

まあ、幻水世界にクリスマスはないらしいんですけどね(笑

2006/12/23