お題提供:レラ・ペラトルカ
アリスは言いました。
「死んでくれる?」
少女の声と共に降り注ぐ「何か」によって、周囲のシャドウは一気に霧散した。
その一瞬の出来事に傍にいた順平は目を見開いた。
そういえば。アリスという「人格」を見せたのは初めてだったか、と軽く思う。
彼の人格たるペルソナは常に変化する。それはまるで彼の心が無形であるに等しいということを証明しているよ
うなものだった。
「へえ……」
順平は感嘆の声をあげた。ふと気付かれない程度に小さく眉根を寄せる。
ペルソナが一定しないことは順平も含め周知の事実であるのに、今更何を驚くような事象があるのだろうか?
「おまえってロリ好きだったのか?」
ペルソナとはもう一人の自分。
すなわちこの幼い少女も彼の一要素な訳で。
「おとなしい顔してやるもんだなー」
『ねぇ、』
声が重なった。
先程聞いたばかりの甲高い少女の声と、常に一緒にいる割にあまり聞くことのない同年代の中では高めの声。
振り返るとそこには銃を片手に持つ少年と、わくわくとした表情でたたずむ少女の姿。
「……って、え、何ちょ」
『死んでくれる?』
青い服の少女に誘われて順平が辿り着いた先は地獄の入り口だったとかそうでないとか。
アリスは言いました。「ねぇ、死んでくれる?」
コロマルと散歩
たまに何か隠し事がしたい(あくまでやましい事があるという意味ではない)ときに彼が一番警戒しているのは、
コロマルだった。
コロマルは最もきめ細かな感情の読み取りができるメンバーであり、彼の傍にいると簡単にその感情がばれて
しまうのだ。
嬉しいと思っているときに一緒になって尻尾を振ってくれるのはいい。
苛立ちを感じているときに気を紛らわせるかのように一声鳴いてくれたこともある。
しかし彼はどこかお節介のきらいがあるらしい。一人になりたいと思っているときに、あえて傍にいようとしてくれ
るのにはどう対処していいか迷う。
犬なのだからばれたところでどうということはない、と思うことはない。
コロマルはメンバーの一員であり、その中に溶け込んでいる。何より、アイギスは彼の意思を読み取ることがで
きる。
アイギスに彼のマイナスな感情を知られれば、嫌というほど世話をやいてくるに違いない。
彼はアイギスのことを嫌ってはおらずむしろ好ましく思っているが、誰であっても自分のテリトリーの中に入られる
ことだけは嫌なのである。
不機嫌極まって纏わりついてくるコロマルを蹴り倒してしまった日には後悔で夜も眠れないだろう。
だから今日はコロマルには見つからないようにと寮での彼の定位置であるテレビの脇を死角から回りこんで外へ
出て行こうとした、のに。
「わんっ」
隠れよう隠れようとあいていると逆に気配が濃くなってしまうのかもしれない、どこか達観しつつ目をやるとコロマ
ルが平然とした顔で座っていた。
どこへ行くの?今日は何から逃げてるの?
「……コロマル、おいで」
「わんっ」
彼が呼ぶとコロマルは素直に尻尾を振って近寄ってきた。
「一緒に散歩に行こう。口止め料はそれでいいかな」
「わんっ!」
全く。ポーカーフェイスが得意のはずなのに、隠し事のひとつもできやしない。
コロマルと散歩
vs.エリザベス
「こちらが今回の報酬となります」
「……」
「どうぞ有効に活用くださいませ」
タルタロスに挑む前、彼はいつも「瞑想」を行う。
それはただエントランスの端のほうで軽く目を閉じているだけなのだが、彼のペルソナの著しい変化が起こるの
もその「瞑想」の後である。要するにベルベットルームへと入っているのだが、その意味を知らないその他のメン
バーでは単に目を閉じているだけにしか見えず、しかしそれを中断する理由もないためにその奇行は流されてい
る。
だが、今日はいつもと違うことが起こった。
「……あっ!?」
彼の珍しく焦った声がエントランスに響いた。「瞑想」がそんな形で終了するのは初めてのことだし、まず彼が感
情をここまで表に出すのも珍しい。
「どうしたんだ、一体……っ!?」
近いところにいた真田が彼に近寄ると、彼もまた同じく顔を引きつらせた。
何事かと他のメンバーも寄ってみれば、彼の手にあったものは
ハイレグアーマー。
「……それ、どっから出したの?」
確か先程までは手に何も持っていなかったはずで。
ってゆーか何でそんなの持ってるのって話で。
……周囲の微妙な目線を受けながら、彼は一人闘志を燃やしていた。
エリザベス……これは僕に対する挑戦か?そうか、そうなんだな……!
vs.エリザベス
最後のは本気で喧嘩売られたかと思った(笑
コロマルは気がきくと思います。