お題提供:サ萌エク同盟
冷たい視線
「……」
「まだ気にしてるの?」
「……いや、確かにそうなんだが。違うんだ」
「何が違うのよ。森のプニム達に『おまえ、くさい』って言われたこと気にしてるんでしょ?」
「……はっきりと言うな」
「ほら。仕方ないんじゃない?きっとプニムの嫌いな何かのにおいが偶然しちゃったとか……そういうのだと思うよ」
「……いや、あいつら言ったんだ」
「へ?」
「俺からは鉄の匂いがするって」
「鉄?……ああ、鎧ね?」
「……血のにおいって言われてるようで、ちょっとな」
「…………………」
13.冷たい視線
代わって
「お客様、どうかいたしましたか?」
「……これ、どうしてこんなに偏ってるんだ」
「偏って……?本日の特別ランチはゼルニにドナドにアロットにと味と栄養のバランスよく作ってあるはずですが」
「……」
―――だめだよ、好き嫌いせずに何でも食べないと。
何度呼びかけても常世の石の反応はない。
21.代わって
すれ違い
「あ、レオンさん」
「……」
「レオンさん、どうかしたのですか?」
「……」
「レオンさん!」
「―――――――!あ、ああ……オーレルか」
「何かあったのですか?ずいぶん考え込んでいたようですが」
「……いや、エイナがな……」
「エイナさん?」
「さっきからずっと呼んでるんだが……反応がなくて……」
「心当たりは?」
「それが全く」
「……嫌われたとか?」
「…………」
「(うわ、今思い切りへこんだ)」
「あれ、エイナさん」
「あ、オーレル。おはよう」
「……おはよう?」
「あはは、実はさっきまで寝てたんだ。気がついたらレオンったらとっくに起きてて動いてるものだからびっくりしちゃった」
「……(ああ、そういうことだったのですね……)」
30.すれ違い
剣を握れ
俺はあいつと共有している。
ふと目線が手元に行く。
俺の手に握られているはずの、両手で握らなければ操ることができないはずの剣は、しなやかな動きによって片
手でさばかれている。
すらりと伸びた細身の剣が、掲げられて光を返した。
視覚を閉じた。
聞こえるのは滑らかに風を切る音。すばやく切り返される踏み込みの音。短く浅く繰り返される息遣い。
剣戟の音は途切れなく続く。
視覚を戻した。
ぴょこぴょこと目の端に移るのは、ひらひらとした白い服の端と、透き通るような薄い桃色の髪。
そしてさまざまな角度から返される剣の光。
俺は再び視覚を閉じた。
すべては俺と対極だが、共に舞うステップだけは揃わないことがない。
33.剣を握れ
このままじゃいけない
「ノヴァ、ちょっといいか?」
「何だいレオン」
「転生の塔へと辿り着いたら、俺たちは生まれ変わることが出来る……そうだよな?」
「ああ、そうだよ」
「この世界でのことは、全て忘れてしまうんだよな……」
「……ああ」
「……全部。エイナと一緒に旅してきたのも、ノヴァに導かれてきたことも、全部……」
「……」
「迷って、いるんだ。俺は何のためにこの旅を続けているのか。転生のためだけじゃない、もっと違う何か……エイナ
やノヴァとの、この心地よい時間を過ごすために、旅をしている気さえするんだ……」
「……この世界に残るという選択をする事だって出来るんだよ?」
「……それは」
「まだ先は長いよ。納得がいくまでじっくりと考えるといい。そのための旅でもあるんだから……」
「……ああ……今の話、エイナには黙っててくれな」
「分かったよ」
36.このままじゃいけない
頼りにしている
「もし同居人が私じゃなかったとしたらどうなってたと思う?」
「どうって……いきなりどうしたんだ」
「いいから答えてよ」
「……」
「だんまりは無し」
「……て」
「え、何?」
「……相手と喧嘩してそれでお終い、かな」
「え、でも私のときは謝ってくれたじゃない?それに君だって悪気があったわけじゃなかったしさ」
「それでも普通、見ず知らずの相手の言うことをそう簡単に受け入れられたりするものじゃないさ。そのうち話もでき
なくなっちまうだろうな」
「ああ……そうかもしれないね」
「お前みたいな馬鹿がつくほどの相当なお人よしでもなきゃな」
「……それって私のこと褒めてるの?」
「一応そのつもりだが」
37.頼りにしている
この世界は…
「エイナ。こんな所にいたのか」
「レオン」
「すごい花だな。昨日はこんな所があるなんて気がつかなかった」
「綺麗でしょ。さっき見つけたの」
「ああ」
「……でも、この花だって、エグゼナのような悲しい魂たちでできてるんだよね」
「……」
「こんなに綺麗な花なのに、でもこれは、この世界ができた時からの長い長い時間で積もった悲しみや無念のカタチ
なんだよね……」
「だから俺たちは『導き手』になるんだろう」
「……うん」
「そんな悲しい魂たちにも捧げることのできる花を咲かせるために」
「そうだね」
「そろそろ出発しよう。もっとこの世界のことを知らなきゃな」
「立派な『導き手』になるためにね」
この世界から少しでも悲しみや後悔の魂を無くすために。
いつか彼らに、そんな魂からできた物でない花を捧げよう。
オマケ.この世界は…
ゆっくりと埋めていく……というか、埋めようと躍起になるつもりはない。
思いついたら随時追加。気が付いたら増えているかも(笑