五感を通じ、知らないあなたを知っていた

 

 

 ギグ曰く。

 最近、ホタポタの味が落ちたのではないか、と。

「そうかな?」

「間違いねえよ」

 身を乗り出して主張する彼の言を疑う方がおかしいと言えばおかしいのだが(ギグのホタポタに対す

る情熱については知られているところだ)、リベアには思い当たるところがなく首を傾げた。

「ギグ、よくイップスさんのところに行ってるんでしょ。そんなこと言ってた?」

「いや、イップスのやろーには心当たりがねーらしいんだがよ」

 むすっとした顔をして口を尖らせながらギグはぶつくさと愚痴り続ける。

「なんちゅーか、口の中に広がる独特な瑞々しさとでもいうんかよ。その辺りがどうにも足りないというか」

「意外と細かいね」

 ギグの意外な繊細さに軽く感心していると、彼はじと目でリベアの方を見た。

「相棒、お前には心当たりないんか?」

「そんなこと言われても」

 大体ホタポタは手に入れた傍からすぐにギグの胃袋に消えていく。リベアはその余りを細々と頂くだ

けだ。ギグ同様にホタポタの虜になっているリベアにとって苦行のような日々だが、ちゃんと約束どおり

帰ってきてくれたことに免じて諦めている。しかしそろそろ我慢の限界、また前のようにギグが寝ている

ときにこっそり食べてやろうかとも思っているが……ギグが自由な体を手に入れた今それをやると本気

で彼に殺されそうで困る。

 何とか数日前に食べたホタポタの味を振り返って、ふと頭の端に残ったことを思い出した。

「そういえば、ちょっと甘みが足りない」

「甘み?」

「蜜のところにどろっとくる独特な甘みというか」

 片っ端からギグに食べられていてその余りものしか食べていないせいかとも思っていたんだけど、とリ

ベアは小さく主張したが、ギグには届かなかったようだ。

「そうなんか?俺はそんなこと全然思わんかったけどよ。この甘さがたまんねえ」

「私はギグのいうことに思い辺りがないな。ホタポタのおいしさはこの瑞々しさだよ」

 微妙に食い違う二人の主張に、お互い首を傾げた。

 

 

 

「……もしかして」

 かなりの間の後に、口を開いたのはリベア。

「私たち、味覚を共有してたでしょ?」

「ん?ああ」

 味覚どころじゃないが、とは言わなかった。言えなかった。

「おいしいって感じるものも共有してたのかな」

「共有も何も、融合してない今だってホタポタがうまいことには違いねえだろうが」

「うん、だから」

 リベアは腕を組んで考えながら話す。

「ギグがおいしいって感じる甘さを私は感じることが出来て、私がおいしいって感じる瑞々しさをギグが

感じることが出来たんだ、ってこと」

 ああ、そうか。ギグを置いてリベアは一人納得し始めた。

 リベアの言わんとすることを噛み砕き、分かるような分からないような言葉を飲み込もうとするギグに、

彼女はどこか寂しそうに微笑んだ。

 

「私が好きな味を、ギグはもう感じることが出来ないんだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後再び、『融合時』のホタポタの味を味わえるようになったのは、よかったのか悪かったのか。

 

「ホタポタもうめーし、このままでいいんでね?」

「いや、駄目だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり

ギグが特に好きなところ⇒甘み
リベアが特に好きなところ⇒瑞々しさ

味覚共有ゆえに、好みの味も共有していた。で、融合解除されて、相手の好きだったところが余り感じなくなった、って話。
解説入れないと分からないかな・・・。

個人的に、あそこまでギグがホタポタ狂になったのは、二人分のおいしさを感じていたからじゃないかとか妄想してみる。

しかしホタポタは一体どんな味なんだ・・・描写に困るじゃないか。

20070404



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